「ウェブはグループで進化する」紹介
「ウェブはグループで進化する」を先日読み直しましたので読後感をつらつらと。
ウェブはグループで進化する ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」
- 作者: ポール・アダムス,小林啓倫
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/07/26
- メディア: 単行本
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基本的にはこの本は、マルコムグラッドウェル「急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則」
で紹介されているネットワーク理論へのアンチであります。
急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則(ソフトバンク文庫)
- 作者: マルコム・グラッドウェル,Malcolm Gladwell,高橋啓
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2007/06/23
- メディア: 文庫
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マルコムグラッドウェルは「ティッピングポイント」という概念を紹介し、このティッピングポイントに到達するためには、「インフルエンサー」と呼ばれる津田大介的なというかホリエモン的なというか、ともかく「ほかの消費者に対して“カリスマ”的に大きな影響を与えるような『個』」の存在が決定的に重要であると述べているわけです。
これに対し本書では、
「『インフルエンサーがいてそいつが流行を創り出すキーマンになるから、インフルエンサーにアプローチすればOK!』みたいなのは、そうあって欲しいという願望が生んだ妄想だろ」
とばっさりやってしまいます。
「インフルエンサーなどいない」というのは、確かに直感的にも整合するところがあります。普段ウェブを使っていて、インフルエンサーがいたからその人のおかげでバズったというよりは、大衆がコンテンツを押し上げていったというパターンのほうが良く目にするものであります(このへん、今読んでいる大塚英志の「物語消費論改」のなかでの、「インターネットの登場により、操作する主体は不在となった/大衆を動員するものは(為政者などではなく)大衆となった」という指摘にも共通する側面があるような気がします)。
さて、別の指摘で印象に残ったのは「ソーシャルネットワークの構造が与える影響」という章です。
「ソーシャルネットワークの中には、明確な境界線が存在する。中心にいるのは最も親しい人々で、中心から離れるほど次第に関係の薄い人々になる(P68)」という構造のもと、その境界線とやらとそこに含まれる人数、そこで起こっていることを述べているものです。
①5人程度:最も親しい人々。
②12~15人のグループで、「共感グループ」と呼ばれる。
③50人ほどのグループ。私たちが自信を持って「近況を知っている」といえる存在。
④150人のグループ。これを超えると集団を維持しづらくなる。
これらを分けて考えることが集団に対するアプローチについては相当に重要なことなのだとポール君は言っているわけです。
まあそんな感じで、これからはモノとかじゃなくてコンテンツを核とした人のつながりが幅をきかせる時代や!みたいなことが(若干違うが)これでもかと述べられていきます。
やや理論の寄せ集め感が否めない&ぶっちゃけこの手の本(FREE以降の最近の和訳されたビジネス本、全部このパターンで辟易する。)は「新しい流れを示した」というよりは、「5年前~現在ぐらいまでの流れをまとめた」的な本になってしまうのですが、言語化して示したという意味では貴重な本ですし、本書の末尾に乗っている引用論文自体は読んでみるとほうほうぐらいの感想はいだけますので興味があればぜひ。
マルコムグラッドウェルのネットワーク理論がほとんどマーケティングの文脈上で語られるものであることから、単純にかんがえれば本書もマーケティングの本であろうということになるのでしょうが、実際に読み進めてみるとこの本はグループで進化すべきもの-すなわちビジネスやサークル活動などにおける組織運営のあり方に対しても示唆的なものであろうとかんがえさせられる内容でした。完。